67期 女性
1 女性弁護士と出産・育児
私は、令和5年5月に第一子を出産しました。所属しているのは弁護士10名程度の一般の法律事務所で、事務所の事件も一人で担当することが多く、成年後見人等として個人で受任している事件も複数ありました。そのため、長期間の産休・育休を取ることは難しく、出産から3か月で子どもを保育園に預け、仕事に復帰しました。
私の住む区は比較的保育園の空きが多く、8月という中途半端な時期でも、区立の比較的大きな保育園に入園できたのは幸運でした。夫は国家公務員で、職場では育休の取得が推奨されており、比較的取りやすい環境にありました。私は、出産直後よりも保育園入園直後の方が慌ただしくなるだろうと考え、夫には私の復帰のタイミングで3週間ほど育休を取得してもらいました。慣らし保育期間中の送り迎えや子の世話をすべて夫が担当してくれたおかげで、復帰は比較的スムーズに進みました。もっとも、夫の育休が終わり仕事に戻って3日後、職場で新型コロナに感染し、子どもと夫が相次いで発症したときは、さすがに大変でした。
出産の2か月前には、成年後見人として担当していた被後見人が亡くなり、出産3日前に相続人への財産引継ぎを行いました。また、出産2週間前には、成年後見業務の関係で不動産売却の決済に立ち会う予定でしたが、逆子のため外回転術を受けることになり、入院せざるを得なくなりました。急遽、同じ事務所の弁護士に決済立会いをお願いすることとなり、妊娠中の業務調整の難しさを実感しました。
出産後も、退院して1週間後には事務所に届いていた書類整理を行い、産後1か月後には、引継ぎがうまくいかなかった家事調停に出席しました。子どもを保育園に預けるまでの間は、夫が休みの土曜日に依頼者との面談を設定するなど、家庭と仕事の両立を模索しました。今思えば、当時は「産後ハイ」で何とか乗り切りましたが、出産は「全治3か月の交通事故に遭ったようなもの」と言われるとおり、身体は万全ではありませんでした。
一般の法律事務所に所属する弁護士は、事務所ごとに産休・育休の取り扱いが異なり、収入面を考えると復帰を早めざるを得ないことも少なくありません。企業の法務部に勤務するインハウス弁護士であれば、育休制度が整っている場合もありますが、私のような環境では長期の休暇を取るのは難しく、こうした状況が続くと、一般事務所に勤務する女性弁護士のなり手は今後さらに減っていくのではないかと懸念しています。実際、私は自分の子どもに弁護士という職業を勧めたいとは、現時点では思えません。
2 今後の課題
弁護士という職業は、これまで「プロフェッショナルとして代替不可能な存在」と考えられてきました。だからこそ、自営業的な自由と責任のもと、ある程度高い報酬が得られる職業でもあります。しかし、弁護士が長期の育休を取れるような仕組みを構築していくということは、弁護士という仕事に「代替可能性」を組み込んでいくことを意味するのかもしれません。もっとも、自由業であるからこそ、業務の裁量を活かして柔軟に休みを取れるという側面もあります。
今後は、各法律事務所や弁護士会が、出産・育児をしながらも安心して業務を続けられるよう、理解を深め、制度や支援体制の整備を進めていただけることを願っています。
出産や育児を理由に弁護士としてのキャリアを中断せざるを得ないという現状を少しでも変えていくために、制度だけでなく意識の面でも変化が求められています。多様なライフステージの中で働き続けられる環境が整えば、弁護士という職業自体がより持続可能で、社会にとっても魅力あるものになるのではないかと思います。

